高次脳機能障害を呈する患者様のリハビリで覚えておくべきこと
高次脳機能障害を呈する患者様のリハビリテーションは、日々の臨床の中でも特に気を使う場面の一つではないでしょうか。
身体の麻痺や筋力低下といった「目に見える症状」とは異なり、
記憶・注意・判断力などの働きに影響が出るため、
患者様ご本人がご自身の状態を理解すること自体が難しい場合も少なくありません。
そのため、リハビリの進め方ひとつで、患者様の不安や混乱を大きく左右してしまいます。
私自身もこうした患者様のリハビリを担当するときには、常に「どうすれば安心して取り組んでいただけるか」という点を意識しています。
特に混乱や不安が強く出やすい方の場合には、必ず二人だけで落ち着ける部屋に移動し、余計な刺激を減らした環境でリハビリを行うようにしています。
自分の体が思うように動かないことへの悩みや、以前との違いに戸惑う気持ちに寄り添うことこそ、リハビリのスタートラインに立つために欠かせない配慮だと感じています。
今日はそのような取り組みについて、少しお話ししてみたいと思います。
病態失認を呈する患者様とはどういった症状が出るのか?
脳卒中後にみられる病態失認は、片麻痺などの障害があるにもかかわらず、
自分の麻痺を自覚できない状態を指します。
たとえば、動かない手を動かせると言ったり、立ち上がろうとして転倒してしまうこともあります。
こうした患者様に対しては、まず否認を責めないことが大切です。
自覚を促そうと無理に現実を突きつけると、混乱や拒否反応を招くことがあります。
そこで重要なのが、安全を確保しながら体験を通して気づきを促す支援です。
例えば、実際の動作練習の中で、麻痺側を使う難しさを体験してもらい、少し助けが必要ですねとフィードバックするなど、穏やかに現実認識を高める工夫が有効です。
また、家族にも病態失認の特徴を理解してもらい、叱責ではなく見守りとサポートを促すことが大切です。
焦らず、段階的に自己理解を深めていくことが、リハビリの第一歩となります。
高次脳機能障害を呈する患者様のリハビリは集中できる場所に移動しよう
半側空間無視や注意障害、病態失認など、高次脳機能障害を呈する患者様のリハビリは
集中できる環境下でリハビリを担当することが重要だと思います。
私はよく高次脳機能障害を呈する患者様のリハビリでOT室やADL室、
時にはST室の個室をお借りしてリハビリをしていました。
どうしてもリハビリ室だと様々な患者様の声や
セラピストの大きな掛け声などが響いていてなかなか集中できないというようなことがあったからです。
こうした環境調整はとても重要になります。
だからこそ、どういった環境が一番集中できるかを考えて
患者様のリハビリをセッティングしてみてはいかがでしょうか?
自宅に帰ったとき、外出先、家族がいるときいないときなど
様々な場面でのリハビリが必要になります。
特に在宅復帰になるとなった場合、自立して行える能力が求められるのです。
もしST室が使えないということであれば、病室などの静かな環境下でのリハビリを検討してみてもいいかもしれませんね。
高次脳機能障害に対するリハビリの効果的な進め方|病態失認への理学療法・作業療法の役割

講師:佐々木 克尚 先生
四国医療専門学校 理学療法学科 専任教員
============ ※※理学療法士・作業療法士・言語聴覚士をはじめとする コメディカル、セラピストのための臨床に活きるセミナーがここにあります。 https://seminar.ep-och.com/ ※※※※※※※※※※※※ エポックオフィシャルX(旧Twitter)では臨床で使える知識や セミナーの最新情報をチェックすることができますのでぜひフォローしてください https://x.com/e_p_och ============