上肢の痛みに対する治療|トリガーポイント治療と交感神経の抑制方法#928
芝 由則 先生
ひろし整形外科 リハビリテーション科科長/理学療法士
3ステップで考える痛みの評価と治療方法を学ぼう
痛みというのは様々な要因が絡み合い,しばしば病態の解釈が困難な場合があります。
これまで当院ではどの機能異常をどの順番で治療するのかを試行錯誤してきました。
その中で、上肢の痛み(局所的な筋痛や関節痛の場合ではない)に対しては以下の手順でアプローチすると解釈しやすいと考えています。
1.交感神経機能の抑制
2.トリガーポイントの不活性化
3.絞扼性神経障害の改善
各々の機能異常が引き起こす症状は合算され現れていますので、
単独で考えていては病態が捉えられません。
交感神経~トリガーポイント~末梢神経と、
痛みの原因をひとつひとつ消去法で探っていきます。
理学療法における物理的手段とは
「理学療法とは病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、
運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。」
(日本理学療法士協会HPより)
上記は日本理学療法士協会による定義で、
理学療法には様々な物理的手段があることを示しています。
実際の臨床では運動療法に偏重するきらいがありますが、
セラピストとして物理的手段の幅を広げることは重要です。
そこで今回は、
①セラピストの手による機械的刺激:徒手療法、モビライゼーション
②光線:赤外線療法(例としてスーパーライザーPX、東京医研社製を紹介します)
これら二つの物理的手段を用いた上肢の痛みの治療の実際をご紹介いたします。
各セラピストの状況によって取り入れていただければと思います。
治療対象の運動器を皮膚上で正確に同定しましょう。
いくらよい手順・方法で治療を行っても、
最終的に物理的手段を入力する部位が間違っていては、そこで得られた結果は参考になりません。
本セミナーでは皮膚上に投影した運動器のマッピングを交えて分かりやすく説明いたします。
プログラム
イントロダクション:徒手療法の分類、赤外線療法の有用性について
ステップ1:交感神経機能異常に対して
①星状神経節
骨および関節マッピング:甲状軟骨、輪状軟骨、胸骨、鎖骨
筋マッピング:胸鎖乳突筋
治療:軟部組織モビライゼーション、赤外線療法
ステップ2:トリガーポイントに対して
①中斜角筋
骨および関節マッピング:第一肋骨
筋マッピング:中斜角筋
治療:軟部組織モビライゼーション×赤外線療法
②上後鋸筋
骨および関節マッピング:肩甲骨
筋マッピング:小菱形筋、大菱形筋、上後鋸筋
治療:軟部組織モビライゼーション、赤外線療法
ステップ3:体性神経機能異常(絞扼性神経障害)に対してのアプローチについて
①腕神経叢(胸郭出口症候群)
筋マッピング:前斜角筋、中斜角筋、小胸筋
神経マッピング:腕神経叢
治療:軟部組織モビライゼーション、赤外線療法
②腋窩神経(四辺形間隙症候群)
筋マッピング:小円筋、大円筋、上腕三頭筋
治療:軟部組織モビライゼーション、赤外線療法
③正中神経
神経マッピング:正中神経
治療:神経系モビライゼーション、赤外線療法
④橈骨神経
神経マッピング:橈骨神経
治療:神経系モビライゼーション、赤外線療法
⑤尺骨神経
筋マッピング:尺骨神経
治療:神経系モビライゼーション、赤外線療法
⑥神経根(胸椎レベル)
骨および関節マッピング:胸椎
治療:関節モビライゼーション、赤外線療法