第1回EPochアカデミックフォーラム in KOBE#188
日高 正巳 先生
日本物理療法学会会長 兵庫医療大学教授
松谷 綾子 先生
ウィメンズヘルス理学療法研究会世話人代表 甲南女子大学講師
概要
物理療法は「脇役」のように隅に追いやられている
現代の医療現場において物理療法機器は非常に多く普及しており、普及度という点で物理療法はポピュラーな治療手段と呼べるでしょう。
物理療法は症状の鎮静化、疼痛の軽減など多くの効果を発揮します。
また単独で使用することはもちろんのこと、運動療法と併用することで、効率良い治療を導くことができます。
即ち、療法士の負担の軽減にも繋がるため、療法士のセルフコントロールにも大いに役立つ手法です。
しかしながら昨今のリハビリテーション現場において、物理療法は「脇役」のように隅に追いやられているのが現状でしょう。
実施者は理学療法士ではなく、助手が主体となっていることが多いのではないでしょうか。
このことは、運動療法に多くの時間を費やしている現状や、理学療法が「業務独占」ではないという事実を差し引いても、物理療法を重要視していない我々の意識のあらわれに他なりません。
置くだけ、当てるだけ、スイッチを入れるだけ…確かに、その作業そのものは、単純で誰にでも出来ることかも知れません。
しかしそれで本当の効果を期待できるでしょうか?
我々はより高度な専門的知識を要求されるようになってきている
エビデンスに裏打ちされた確かな知識に基づき、的確な判断のもと適切に用いる物理療法は、理学療法士の存在価値を高める大いなる可能性を秘めています。
なぜそこに置くのか?なぜそのように当てるのか?どのような時間設定にするのか?
ひとつひとつに込められた意味を理解したうえで患部に適用することにより、全体的な効果に繋がることを熟知しているのは、我々でなければならない筈です。
また近年では医療工学、医療機器の進歩により、多くの物理療法機器が開発されてきています。つまり、我々はより高度な専門的知識を要求されるようになってきていると言えます。
理学療法士は更なる飛躍を望むことができる
変動し続ける社会情勢と、それに伴って繰り返される保険制度の改定、その中で、我々リハビリテーション職種の置かれる立場も常に変化を余儀なくされています。
運動療法や徒手療法に重きを置きがちな傾向が強く、腕試しとばかりに起業する療法士も増える昨今、我々は大事なことを見失ってはいないでしょうか。
与えられた武器を自ら手放して、丸腰で他職種に挑むほど馬鹿げたことはないでしょう。
物理療法と運動療法の相乗効果により、我々理学療法士は更なる飛躍を望むことができます。
社会的地位を求めるならば、いま一度状況を見つめ直し、埋もれている可能性を引き出す努力をしなくてはなりません。
我々だからこそ許された、+αの武器を携えて、益々変わりゆく情勢を確実に乗り越えてゆこうではありませんか。
今こそ、物理療法を基礎から学び直し、その可能性を自在に操れるようになる、そんな貴重な機会をご提供いたします。
