脳卒中片麻痺患者における家事動作とフィードバック機能の重要性
脳卒中片麻痺患者様の歩行動作練習は、
リハビリ現場でさんざん対応してきたという患者様は多い一方、
日常生活動作はやったことが無いという方も少なくありません。
しかしながら在宅生活を行う上で、すべてを社会的資源に頼るということはなかなか難しく、
できる範囲は自分でやらなければいけないということが多いのが現実です。
そのため、訪問現場では歩行練習よりも日常生活動作練習を中心にリハビリを実施するということはよくあります。
ではその日常生活動作はどのようにリハビリを進めていくべきなのか?
今日はそのお話をしてみたいと思います。
脳卒中片麻痺患者様のリハビリは体性感覚を意識したリハビリを進めていこう
運動学習を効果的に進めるためには、
単に動作を繰り返すだけでなく、
「身体がどのように動いているのか」を患者自身が感じ取れることが重要です。
そのために欠かせないのが体性感覚フィードバックです。
例えば、立位姿勢の練習で鏡を見ながら重心位置を修正できても、
鏡がなくなるとすぐに姿勢が崩れてしまうケースがあります。
これは視覚情報に依存している状態であり、
自身の身体感覚によって姿勢を認識できていない可能性があります。
また、セラピストの声かけによって動作が改善しても、指示がなくなると再現できない場合も同様です。
そこで重要になるのが、患者自身が
「今どこに体重が乗っているのか」
「どの筋肉が働いているのか」
「身体のどの部分が支持面と接触しているのか」
といった体性感覚情報を認識できるよう支援することです。
触覚刺激や荷重入力、環境設定などを工夫しながら身体感覚を引き出すことで、
外部からの指示に頼らず自ら動作を修正できるようになります。
体性感覚フィードバックを活用したリハビリは、
歩行や立位、立ち上がりだけでなく、座位や臥位などあらゆる姿勢で応用できます。
真の運動学習とは、セラピストがいなくても患者自身が適切な運動を再現できる状態を目指すことです。
そのためには、体性感覚を活用したアプローチを理解し、臨床で実践していくことが重要となります。
脳卒中片麻痺患者様が日常生活動作を難しいと感じる理由とは?
家事を自分で行うことは、一人暮らしの方にとっては日常的なことですが、家族と暮らしている方はその機会が少ないかもしれません。
しかし、家事を行う際に必要な筋力やバランス感覚に気づくことが多いです。
例えば、洗濯物をかごから取り出して運んだり、干す際に腕を持ち上げたりする動作は、思っている以上に身体に負担がかかります。
重い洗濯物を持ち上げると、ふらついたり、片手で作業することで姿勢が崩れることがあります。
脳卒中後の片麻痺患者様が自宅で家事を行う際も、同様に多くの困難が伴います。
片麻痺のある方にとって、片手で物を持ち上げたり、重さを調整したりすることは非常に難しいため、動作を行う際には十分な注意が必要です。
リハビリの視点からは、家事動作を安全に行うために、片麻痺の側を補助する道具の使用や、動作を細かく分けて行うことが推奨されます。
こうしたリハビリの視点から注意すべきポイントについて一緒に考えてみたいと思います。
脳卒中片麻痺患者様の家事動作で難しいと感じられることとは?
脳卒中片麻痺患者様の家事動作の中でも、「洗濯物干し」は特に難易度の高い動作の一つです。
洗濯物を持ち上げるだけではなく、水を含んだ重たい衣類を頭より高い位置まで運び、バランスを保ちながら干す必要があります。
そのため、前方・上方へのリーチ動作や姿勢制御能力が大きく求められる場面といえるでしょう。
例えば、水を含んだバスタオルの重さを考えてみてください。
一般的なバスタオルでも、脱水後には約500g程度になるといわれています。
吸水性の高いタオルであれば、さらに重くなることも珍しくありません。
その重さを片手で持ち上げ、物干し竿まで運ぶことは、私たちが想像する以上に身体へ負荷がかかる動作です。
さらに、上方へリーチすると頭頚部や脊柱は自然と伸展し、身体の重心は後方へ移動します。
このとき、視覚・前庭感覚・体性感覚から得られるフィードバックを適切に利用しながら姿勢を修正できなければ、後方へバランスを崩してしまう可能性があります。
つまり、洗濯物干しは「腕を上げられるか」だけではなく、「感覚情報を利用して姿勢を調整できるか」が重要なポイントなのです。
だからこそ、リハビリでは筋力や関節可動域だけを評価するのではなく、患者様がどのような感覚情報を利用して姿勢をコントロールしているのかを観察し、適切なフィードバックを与えながら練習することが大切です。
家事動作を評価することは、日常生活で本当に必要なバランス能力やリーチ能力を把握し、より実践的なリハビリテーションにつなげる第一歩になるのです。
エポックセミナーではこうした日常生活動作に加えて応用動作の獲得方法についても解説しています。
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講師:生野 達也 先生
動きのコツ研究所 所長 / 理学療法士
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