「身土不二」の精神で食生活は身近なものから
現在では、街にあふれる「食」に関する情報にも注意が必要です。テレビや料理の本などでは、○○は身体にいい、××は身体にわるいと毎日のように、たくさんの情報が提供されています。こうした情報には確かに正しいものもありますが、メディアも基本的にはビジネスとして情報を流していることを忘れてはいけません。
本来、食はもっと「自然に近い」存在でした。 季節によって旬をむかえる食材を、伝統的な調理法で料理に仕立てて食べていました。 便利さや特殊な情報に流されなければ、自然条件のもとで与えられた食材が、自然と身体に入ってくるしくみになっていたのです。
「身土不二(しんどふじ)」という言葉がありますが、こうしたありかたを端的に示しています。 「人の体は、生まれた土地の自然環境とは切り離せないもの」という意味です。 古代中国の単位で、五里四方(半径25km程度) の中でとれる作物を食べ、その地域で生活をすることが健康にとっていちばんいいことである、という教えなのです。
また、西洋でも、ドイツの詩人ゲーテが、「自然から遠ざかるほど、人間は病になる」と説いています。 薬膳に限らず、古今東西、自然から遠ざかることが、いかに人間の健康を損なうのかが繰り返し指摘されているのです。